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私はなるべく慇懃にマデリンに問いました。
「して、何故私を呼び出されたので?」
私は「ソロモン72柱」という位に位置する地獄の大公でございます。何が言いたいのかと言いますと、私こう見えても中々強いのですよ。
私は、一体誰を呪い殺せば良いのかと、そんな事を考えておりました。
ですから、マデリンの言葉に、私はこれ以上無いほど驚いたのです。
「話し相手が、欲しくて……」
「……は」
私の口から漏れたのは、酷く間抜けな声でした。
「いけないかしら」
「そんな事はありませんが……」
マデリンは物憂気に窓の外を見ながら、自分の身の上を語り始めました。
「わたくしは、日に当たれない体なのです。この部屋からは一歩も出られず、友達等出来ようもありません。両親はわたくしを可哀相な子としか見ませんし、メイドなど論外。……わたくし、誰とも話さない日があるような子なのですわ」
マデリンは私の方を向き、
「だから……わたくし、誰でも良いから話し相手になっていただきたくて……」
「……それで、私を」
「ええ」
マデリンは見間違えようも無いほどしっかりと頷きました。
始め私の耳がいかれてしまったのかと思っておりましたが、成る程、聞けば理由は分かります。
「何故私を選んだのです?」
「……適当に本を開いたところだったから」
何と言う事か。
そんな情けない理由で、私は子供の話し相手に選ばれてしまったのです。
「よろしくね、クロノ」
私の目には、マデリンの笑顔が非常に忌ま忌ましく映りました。
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