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私の姿はマデリン以外には見えませんので、私は自由に広い屋敷の中を動き回ることが出来ました。
言葉等から、私はフランスに呼び出されたのだと知りました。
マデリンは位の高い貴族の娘でした。本来ならば、きらびやかなドレスを着て、ヴェルサイユに通っていたことでしょう。
マデリンの病気は、二百年経った今でも治すことの出来ない不治の病でしたから、当時の医学では手も足も出ない状態でした。
それは、マデリンが食後に服用しようとした薬を見れば直ぐに分かることでした。
「そんな物は効きませんよ」
私は、薄紙に包まれた白い粉を手に取ったマデリンに言いました。
「本当に?」
「ええ。中途半端な呪(まじな)いに基づいたろくでもない代物です。飲まない方がましですよ」
「高い薬なのに………」
これ一つ買う金で庶民が暫く生活できるのだとマデリンは言いました。
マデリンは聡明な少女でした。
少なくとも、同世代の少女達よりは、ずっと賢かったでしょう。
この時代の女性は教養が無いのが一般的でしたが、マデリンは特別な環境下にいたせいで他の少女達よりずっと沢山の事を学んでいました。
マデリンが私を呼び出すことが出来たのも、彼女が学問をしていたからなのです。
「学のある女を、男は嫌うわ。わたくしはきっと、お嫁の貰い手が無いわね」
何時だったかマデリンがそう零したことがありました。
「そうでしょうか。私は能無しの女より、聡明な女の方が側にいて楽なのですが」
私は正直な感想を述べました。
しかしマデリンは、
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