163人が本棚に入れています
本棚に追加
そう、これは話とは関係無いのですが――
私はマデリンを助けたことについて、分からないなりに色々と考えました。
幾つか上がった理由の内、納得し得るものもありました。
一つは、マデリンが私と対等に接していたことでしょうか。
悪魔人生の長い私も、召喚した後使役という形を取らなかったのは、マデリンが初めてでした。
聡明な彼女と暮らす事に、少しばかり……楽しいと思っていたのが、私がマデリンを助けた最たる理由かもしれません。
まあ、悪魔というものは気まぐれでございます故……助けた理由もただ気まぐれだったのかもしれません。
私がこんなに考えても分からないのは、体が勝手に動いたせい。
悪魔が動くのは利益が絡む時だけ。地獄に有らせられる陛下以外に、忠誠等誓うはずもありません。だから、体が勝手に動く等、有り得ない筈なのに。
……長々と申し訳ありません。
話を戻しましょうか。
※
その日は、マデリンがせがむので、私は外が今どうなっているかを話して聞かせていました。
「そうですね、流行り色は青系のようです」
「あら、早速新しいドレスを作らせようかしら。あなたに見てもらいたいわ」
私が来てから、マデリンには笑顔が増えたようです。悪魔の私からすれば、あまり栄誉な事では無いのですが。
「楽しみにしておきます。ああそれから、新しい劇が始まるようです。人気の俳優が出るとかで、やたらと人気ですよ」
「まあ!」
マデリンはまるで椅子にばねが付いているかの如く跳ね上がりました。
「見に行きたいわ。わたくし、前から劇には興味が……あって……」
マデリンの声は、段々と小さくなり、とうとう消えてしまいました。
「無理なのに、何を言っているのかしら。わたくし……」
「夜なら、外出出来るのではないのですか?」
マデリンは首を横に振りました。
「夜なら出掛けられるけど……私は足が弱ってて、馬車を使わなくちゃどこにも行けないわ。夜は、馬車番は寝てしまっているもの」
私はそこでもう一度――卑怯だなんて言わないで下さい、これが私の仕事なのです――持ち掛けました。
最初のコメントを投稿しよう!