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「くーちゃん、平気……?」
ノックもせずに私の部屋に入ってきたのはカザくんだった。
この家にはもう、私とカザくん……霜月楓喜(シモツキカザキ)しかいない。
私とコウとカザくんは親の元から逃げてきたのだ。
親戚の神原おじさんの保護のおかげで、私達はここにいられる。
「平気」
短く答え、慣れない短くなった髪の毛を掻く。
今日は私立桐谷学園の入学式。
私は今日から、そこに中学一年生として入学する。
神原おじさんが書類を偽造し、男子用の制服まで用意してくれた。(職権乱用。というやつだ)
コウと同じ学年の人は今中学三年生。
私がここで入学しなければ、コウと同じ学年の人は高校に入学してしまい、真実を知る機会がなくなってしまう。
一年間は小学校に行かず、カザ君に小五、小六の勉強を教えてもらっていた。
学力的に問題はない。
顔も幸い元の形は似ていた。色素や髪型、身長が違っていただけで、身長はネットで身長を伸ばす方法やあやしい薬なんかを買った。
そのおかげで小学六年生にして148センチ……コウの中学一年生の身長になった。
「自分の成長が遅くて本当によかったって思うよ。胸ないから
男装しても ばれないよね」
普段だったら「オレがもんでおっきくしたげる!」なんていうカザくんも唇をかみ締めるだけだった。
私は栖原高貴として桐谷学園に入学する。
小さくて弱い、小学六年生の“くーちゃん”じゃない。
「学校で見かけてもくーちゃんって呼んじゃダメだよ、帰る時間も見計らってずらしてね?出る時間もずらしてね」
「今ならまだ、間に合うよ?俺が調べるから……くーちゃんは桜花(オウカ)にいなよ」
桜花、というのは私が通っていた桜花女学院のことだ。
「ダメ、絶対にやだ。私が調べるって決めたの」
私はコウとして彼は本当に自殺なのかどうかを調べる。
もし、本当に自殺なら自殺原因を調べる。
だって、もしコウの自殺が本当だとしても、コウの自殺原因が分からない。
警察は『ノイローゼ』なんて言葉でかたしてたけど。
そんなわけがない。絶対に、違う。
勘だけど、それは確信に近いものがあった。
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