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「あらら、逃げなくてもいいのに…」
ドアの向こうからそんな声が聞こえた。
「お願いだから、昨日も言ったと思うけど、お願いだから羞恥心を持て!」
「ふぅん。そんな心、遠の昔に捨てたわ」
「なんでそんな偉そうなの!?」
しかも捨てちゃったんだ…。捨てていいもんじゃねぇよ。
「いちいちツッコミ入れて…ちょっとウザいわよ」
「なに言ってんの!?」
なんで僕が、そう言われなくちゃいけないの!?
「あっ間違えたわ」
「………………」
「かなり…うぜぇよ」
「間違いそこなのっ!?しかも言い方が酷くなった」
心底、煙たがそうに言われたよ。
「ちょっと!五月蝿いわよ、月々くん。家族に貴方の存在がバレたら、どうするの?」
「此処は…いやもういいや、疲れる。いいから、早く着替えろよ」
「わかりました」
あっそこだけ素直なんだ。
僕が廊下に出て一時間が経った。
女性の身支度は時間がかかる……とは言うが、これはこれはかかり過ぎじゃないだろうか?いや、着がえるだけだ。そんなかかる訳がない。じゃあなんで…まさかっ!!
疑うには充分な理由がある。
相手が鏡神無音ってだけで充分すぎる。
僕は急いでドアノブに手を掛け、一気に開けた…けど、ドアには鍵が掛かっていて開けることは出来なかった。
「ちょっ!?なにしてんのこの女!無音さん、出てきて」
ドアノブをガチャガチャする。
僕は自分の家の自分の部屋のドアを、なぜガチャガチャしなくちゃいけないんだ!
「おい、鏡神!」
その時、鍵が開いた。
開けたのは当然鏡神。
「五月蝿いわね~。寝れないじゃないの」
「お前、自分の彼氏を廊下で待たせといて、自分は悠々と寝ていただと」
「うん」
僕はこの女を殴ってもいいですよね?
「まぁ過ぎたことはいい。寝てただけな……………」
部屋に入った瞬間に言葉を失った。
部屋がすごいことになっていた。
ベッドの上はわかる。さっきまで鏡神が寝てたから。けど、床に散らばっている、僕の本(あっち系)はなんだ!あれは、絶対に見つからないように隠したはずなのに。
「巨乳も好きなのね、この変態さん」
「やっぱりお前しか……いないよな」
「木を隠すなら森戦法も意外にメジャーよ?」
「……………無音さん」
「なに月々くん?」
「しいぃぃいいいねぇぇえええええ!!」
僕は右手に手刀をつくり、振り上げて、そして力の限りを尽くしてそれを、鏡神の頭に振り下ろした。
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