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紘季の体は血まみれで呼吸がやっとだ。力無く壁にもたれているだけだった。
依然として浩介の周りには、こちらに刃を向けて浮いている彫刻刀がある。
「ハァ………ハァ………。浩介………もう……止め……て…………くれ………。ハァ………ハァっあぐっ!!」
再び彫刻刀が紘季に刺さる。今度は左肩。もう十五本以上もの彫刻刀が体に刺さっている。
血と肉の混ざった物が紘季の体を伝い床に落ちる。
もう………………駄目だ。晶、また一緒だな。
紘季は“死”を感じていた始めていた。寂しさでもなければ怖さでもない。喜びではもちろんない、その気持ちを。
『………………………ツナキ…………チョウコクトウ……………ヲ…………ヌイテ………アゲル…………。』
「!!!」
紘季にこの声は届き、紘季を驚かせた。
そしてこう思ってしまった。
助かった。と。
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