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切り傷だらけの紘季に浩介は静かに近寄って来た。
と、同時に画用紙が美術室の倉庫入り口付近から浩介を目掛け飛んで来た。
「浩…………介?何を………する気だ?」
紘季の問いに、浩介は紘季の顔を見るだけだった。
浩介は画用紙を取り、そして紘季の方に指を向けて、その指先を自分の方に畳んだ。
ブシャッ! ブッヅ!
「っづ!!」
浩介の指に操られ彫刻刀は紘季の体を離れた。浩介の周りの彫刻刀も急に重力を受け、床に落ちた。
床に金属が当たり音が響く。やたらと彫刻刀の音がでかい。そんな感じが紘季はした。
紘季は床に転がる彫刻刀と自分の体を見つめた。
全身の至るところから血が出ている。意識が朦朧とするが、血の色と匂いははっきり感じられた。
しかし同時に“生”を感じた。浩介は許してくれた。自分は助かったのだ。と。
紘季は顔を上げて、浩介の方を見た。
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