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「ぎゃはは!マジでー?」
「マジ」
「超ウケるぅ!」
アイカミ ヨウコ
「本当っ。相上って、葉子の事好きだったんだねぇー」
ローカの隅に集まって、ぐるりと円になっている、数人の女生徒。
その騒がしい声に、傍を通る生徒達は顔をしかめて、その横を通り過ぎていく。
「で、で!付き合うの?」
「まさか、やめてよ。あんな暗いヤツ。気持ち悪いからっ」
「やっぱしー!?」
「葉子ひっどぉ!」
そしてまた、高い笑い声を上げる女達。
葉子は正直、ちっとも笑えなかった。
おもしろくない。つまらない。うるさい。笑うな。
葉子は、笑顔の仮面を貼り付けたまま、心の内で思った。
その日の放課後──。
ガラッ。
「あっ、相上……」
「ああ、葉子さん」
葉子はあからさまに、嫌そうな顔をした。
「何でまだ残ってんのよ」
「葉子さんが、図書室から帰るの待ってたんだ」
「はぁっ!?」
何を言ってるんだ、こいつ。キモイ……。
「何でそんな事知ってんの?」
「そりゃ、いつも見てますから」
ぞわっ。
葉子は身震いがした。
何故そんな事をさらっと言えるのだ、この眼鏡オタク野郎。
「んな事、知ってんな!」
「だって仕方ないよ。葉子さん、俺と似てるんだもん」
……は?
「誰があんたに似てるって?ふざけんのも、いい加減にしろよ」
「だってつまんないでしょ?」
「…………っ」
鉄拳の一発でもお見舞いしてやろうと、彼に近づいていた葉子は、ぴたっと立ち止まった。
「何がよ?」
「学校も、友達も」
「はあ?何であんたに、そんな事言われなきゃなんないの?ウザイよ」
しかし相上は、楽しそうに微笑んだままだ。
「ナメてんなよ、お前!」
「無理するのやめた方がいいよ。葉子さんて、本当は優しくて大人しいタイプの人でしょ?必死に合わせてるだけで」
「………」
葉子は何も言えない。図星だけに、である。
確かに、彼女は学校にも、友達にも違和感を感じていた。
自分の居場所なんてない。そう思っていた。
「……何で分かるの?」
「だからいつも見てたから」
相上はにっこりと笑う。
葉子はすっかり、彼に手玉に取られているような気がした。
ムカつく……。でも……
でも、何だか……
"彼は私を分かってくれる"
そんな風に思ってしまう私は、きっと頭がおかしいのだ。
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