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夜は更け、辺りには静寂がばらまかれている。
ダイチ
ともみと大地は、電気を消した真っ暗な部屋のベッドの上に座り、手を繋いで寄り添っていた。
「ねぇ……」
ともみが口を開く。
「何?」
「痛いと思う?」
「え……何かそうらしいけど」
「私、痛いの嫌だなぁ」
「えー、え え……」
大地は口をぽっかり開けて、とても微妙な表情をする。
「じ、じゃあ~……や、やめる……?」
とてつもなく、ゆっくりとした口調で、大地は言った。
相当、残念らしい。暗闇の中でも、しょんぼりと沈んでいるのが分かる。
ともみは思わず吹き出した。
「可哀想ねぇ~、ワガママな彼女で」
「本当だよ。あーあっ……。まぁ、いいけどさ」
「本当~?嘘でしょう。残念でしょう?」
ともみはにやにやと、大地の腕をつっつく。
「別に~。彼女さんがワガママですから」
「ほら、怒ってる」
「怒ってやしないよ。そうは言ったって、やっぱり俺はともみが大事だからな。大事に扱いたいと思うもん」
「あはは!かっこいい~」
ともみは口元を押さえて、笑い転げる。
「こんのやろっ!」
「きゃっ」
ともみは大地に、ベッドに押し倒された。
「なっ、ナメんなよぉ!」
「…………」
そんな事を言って、大地の手の方が震えている。
ともみはまた笑った。
なんてかわいらしい。
かわいい、かわいい、私の愛する彼氏。
「ナメてないよ」
ともみは、大地の頬を手で優しく撫でる。
「えっ……」
「大地」
「はっ、はい!」
「私、幸せ」
ともみはそう言うと、とても柔らかく笑った。
「……うん、俺も」
大地も、気恥ずかしそうに顔を赤く染めたが、優しく笑った。
夜は優しく更けていく。
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