その時、貴方は夢となる

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      ウツミヤ 「ねぇ、写宮くん」  サクライ チカ  桜井 知香は、前の席でぼぉっと、窓から雪を眺めている写宮に声をかけた。 彼は相変わらず手には、紙パックの牛乳を握っている。 どうせまた、食堂のだろう。 他のと何が違うのか、見当もつかないが。 「あ、何?」 写宮がちらりと、目線だけ知香に移して答える。  ──と、ここで知香は、何故か迷ってしまった。 これは、言わなきゃいけない事なのか……? 一瞬、頭の中で思案する。 何だか、恥ずかしくなってきた……。 「いいよ、言って」 写宮はきちんと、知香に向き直った。  知香はもごもごとしていたが、やがて顔を上げ、 「昨日、写宮くんが夢に出た!」 とだけ言って、顔を伏せた。  あーっ、恥ずかしい!何か私、バカみたい。 知香は、写宮が何も答えないのに、不安になって顔を上げた。  すると写宮は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。 「う、写宮くん……?」 「桜井……」 「はい」 「僕も」 「はい?」 「僕も昨日の夢に、桜井が出た」 「………」 知香は、完全にふいを突かれて、言葉を無くした。 「そ、そうなの……」 「うん、すごいね、運命だなー」 写宮はそう言って、牛乳のストローをくわえた。     あれ?もう終わり? 知香はかなり驚いて、すさまじく運命的なものを感じていたのだが、どうやらこの話題はもう終了したらしい。  くっそぉ……。 知香はゴンと机に顔を伏せる。 見てろよ~。いつか夢じゃなく、本当に好きだ、って言わせてやる。 机の上で拳を握る。  せめて、牛乳には勝てますように……。 知香は雪に祈った。  
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