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あ、雪だ。
ハル
春は、ベッドに寝転びながら、外を舞う雪を見た。
今年の初雪は早いな……。ぼんやりとそんなことを想いながら、枕に顔を埋める。
白い枕は気持ち良くて、白い雪はとてもキレイで、春の布団はふかふかで、彼女の気持ちもふわふわだった。
たまに、こんな時がある。
心の高揚と空の風景が一致した時なんかに、彼女は妙にふわふわした気分になる。それは白く積もる雪というより、そのうえに寝転ぶような、不思議な、心地よいものだ。
春は、おもむろにケータイを開く。いぜん、待ち受け画面の表示は変化していない。
何してるかなぁ?
トウジ
春はふと、冬司の顔を思い浮かべた。最近、こんな白い気分の時に真っ先に頭に浮かぶのは、同じクラスの冬司のことだ。
何でだろう?
春は、枕を抱えて首をひねる。
まぁいいや、別に。
あっさり切り捨てると、彼女は再び枕に顔を伏せた。
そんなことより、今が気持ちいいから、それでいいんだ。
春は、さらさらとした気分の時に必ず訪れる柔らかい眠気を受け入れた。
──冬司って絶対冬生まれだな。名前からして。
「ふふっ」
春は小さく笑うと、静かに瞼を閉じた。
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