その時、愛は伝説となる

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    ユミノ  「弓乃~。頼むよ、許して」 「絶 対!許さない!」          エイイチ 弓乃はフンッ!と、英一から、思いっきり顔を背ける。 「そんな~。この通りぃ」 英一は両手を合わせて、懇願する。  二人が立っている前のツリーがやけに綺麗だ。 しかし、弓乃はそんな英一に言い放つ。 「そんな事、言ったってねぇ!私の誕生日は、もう返ってこないの! 全く……バイトだか、何だか知らないけど、昨日は空けといてって、私ちゃんと言ったでしょう!?」 「はぁ、まぁ……」 英一のそんな中途半端な答えに、弓乃はますます苛立ちを募らせた。 「せっかく……。昨日は私達の、付き合い記念日でもあったのに……」 下を向くと、涙が出そうになった。 「仕方ないだろー。だって……」  バシッ!! 英一の顔に、弓乃のバッグが激突する。 「いって……!」 「"仕方ない"って何よ!もうっ。英一のバカ!さよならっ!」  弓乃はそう言うと、くるりと振り返ってすたすたと歩き出した。 「おぉいっ、ちょっと待て!」 英一が弓乃の肩を掴む。 「何よっ、離してよ!もう私と貴方は他人です!」 「結婚しよう」 「何を……」  ──……え? 弓乃は、英一の顔を見直した。 「けっこん……?」 「そう。お前ももう、23だし、そろそろ嫁入りしたいだろ?それからこれ」 と言って英一は、きれいにラッピングされた小さな箱を、弓乃に手渡した。 弓乃が箱を開けると、中には美しいダイヤの指輪。  弓乃は英一を見る。言葉が出ない。 「それ買うために、バイトしてたんだからな。もう怒るなよ」 英一は照れたように、そう言った。  弓乃の頬を涙が一筋流れた。 結婚なんて、まだ大分先の話だと思っていた。 弓乃の三つ年下の大学生のこの彼が、大学を卒業して、定職に就くまでは。 諦めていたのだ。  弓乃は英一の胸に、顔をうずめる。 「英一、ありがとう……。メリークリスマス……」 「メリークリスマス!」 英一は、泣きじゃくる弓乃を抱きしめた。  
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