その時、涙は武器となる

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  「ふざけんな!!」  カツマサ  勝正は叫んだ。 どうしてくれよう、この行き場のない怒りを。 「ど、どうして、そんなに怒るのよぅ……」   カホ  嘉穂は、肩をすくめながら、上目使いに勝正に言った。 どうしてもこうしてもない。 「お前、自分が何したかわかってんのか!? 俺は、嘉穂の彼氏じゃないのかよ!?」 「そ、そうに決まってるじゃん……」 「だったら何で!」 勝正は、顔をしかめながら、いったん言葉を切った。 嘉穂の顔が、曇ってきている。 「だったらなんで、俺のこと紹介とかするんだよ!」 勝正は図書室の机を、バンッと叩いた。 嘉穂の体がびくっと震えたが、気にしない。 彼の怒りは頂点なのだ。  勝正は、嘉穂の彼氏であるにも関わらず、嘉穂の友達に紹介された。 まるで合コンのように。 嘉穂はなにも言わない。 気まずそうに唇に指を当て、目を泳がせている。  勝正はため息をついた。 「……もう、いい」 「えっ……?」 「もう、いいよ! お前はどうせ俺のこと、好きでもなんでもないんだろっ! だったら、一緒にいる意味なんかないっ!」 勝正はそう吐き捨てると、踵を返してその場を立ち去ろうとした。 「待って!」  嘉穂は、勝正の腕にしがみつく。 勝正は困惑した目で、嘉穂を見た。 「ごめん、ごめん……。私、そんなに怒られると思わなくて……、軽い気持ちで……。ごめんなさい、バカでごめんね……」  嘉穂は目にいっぱい、涙を浮かべて言う。 勝正は、胸が締めつけられた。  ──ズルイ。 俺がそんなふうに言われたら、なにも言えないの知ってるくせに。 そう思いながらも彼は、嘉穂の頭にぽんっと手を乗せ、 「分かったよ……」と呟くのだった。  
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