2⃣

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赤い傘を私に差し出す男性がいた。 視線を落し、また駅を真っすぐ見た。 やっぱり気になって、もう一度振り向いた。 いるはずないよね… まだいる。 赤い傘を私の座っているベンチに掛け、その男性は私の隣に座った。 その人は、膝に大事そうに花束を置いた。 小さな黄色や白色、ピンクの花が、可愛くまとめてあって真っ赤な大きなリボンで縛ってあった。 …恋人にかな。 横目でちらっと花から、男性の顔を見た。 泣いている。 どうして… 長いまつげ、大きくはないがきれいな目からポロポロと涙が落ちていった。 その日振っている雨のように。
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