空白の一球

4/4
前へ
/12ページ
次へ
   立ち眩みに似た、軽い目眩が俺を襲った。  それでも俺は、構えを崩すわけには行かない。    ズバッと、風を切る音が耳に入った。  頭上に腕を上げる時に微かに聞こえる、独特の音だ。    息を吸って、吐く。  そしてまた、吸って、吐く。    落ち着いてから、また俺はあの打者を睨みつけた。  狙うはストライクのみ!    ボールを握っている方の腕を後ろにのけぞらせ、歯を食いしばる。    ボールを手から離した瞬間、それは物凄い勢いでキャッチャーミット目掛けて飛んで行った。   「……ストライク!」    打者は少しも動いていない。  その表情は『驚き』を隠せずにいた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加