一章・ラスとアト

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 ……と、冒頭から説明じみた文句が、脱線気味に並べられたが、そろそろ本文に入ろう。  現在、ラスはかなりのピンチに陥っていた。  ラスは、道端の真ん中に倒れ、ピクリとも動かない。  顔は真っ青。  生気の欠片すら感じなかった。  ――大ピンチだ!。  数々の難関を乗り越え、邪神を倒す程の人間が倒れてしまうまでのピンチ。  それは――。 「は、腹へった……」  空腹だった。  …………。  世界を救った英雄は、どうやら道端で行き倒れに遭っている様である。  幾多もの修羅場を乗り越え、邪神に勝利した英雄も、空腹には勝てなかった。  このまま行き倒れで死んだとするのなら、彼の英雄伝のラストが事実と異なっていても頷ける。  何故なら、  とっても恥ずかしいからだ。
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