一章・ラスとアト

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 倒れたラスの左腰には、こぶし大程度の皮袋が付いている。  中身は金貨の類いが入っていた。  これは、袋の中身を覗いたから言っている訳ではない。  倒れた拍子に、皮袋から何枚かの金貨がこぼれ、皮袋の近くに落ちていたからである。  ここから察して、彼の腰に付いている皮袋の中身は、金貨の類いが入っていると予想した。  ……が、問題はソコではない。  問題は、  ちゃんと路銀があるのに、  なんでこんな所で行き倒れしているのか?。  それは物凄く不自然で、不思議だった。  何故なら、  ここから数時間程度も歩けば、街道のどちらの方角に歩いても、そこそこ大きな街があるからである。  つまり、街道を沿って歩く分には道など迷う筈はなく、  無論、遭難するわけもない。
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