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「鞠乃……何処に居る」
走りながら遥矢の脳裏に浮かぶのは、どこかで一人で泣いている鞠乃の姿。
「あいつは……泣き虫だからな」
こんな筈ではなかった
泣かせたくないのに
護ってやりたいのに
「情けねぇ……所詮、俺もまだまだガキって事か……」
『遥矢なんて大っ嫌い!!』
そう言われた時、初めて鞠乃を失うと思った。
そう思ったと同時に自身から血の気が引いていくのを感じた。
知識故に得た地位も称号も鞠乃という愛しい者を目の前にすれば何の役にも立たない。
鞠乃の一挙一動に困ったり笑ったりさせられる。
冷血漢とも陰口を叩かれる自分が、こんなにも感情を揺さぶられるのも、それを見せれるのも鞠乃だけだと遥矢は思う。
だからこそ意見をぶつけ合ったり無理をさせたりしてしまう。
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