223人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
神「大丈夫、まだ鬼叉王が完全に復活するまでには十分時間があります」
何てことをしでかしてしまったのかという絶望に打ちのめされていた僕を救ったのは、変わらず同じ静かな口調で語られた神羅帝のそんな言葉だった。
おずおずと顔を上げると、少し緩められた視線が僕の瞳を捉える。
神「鬼叉王を再び封印するにはその時間の間に、焔と同じこの世界の四方を護る“四神”を集めなくてはなりません。しかし焔達が眠っていた時間はあまりにも長い…。そこで人界の神子である貴方に焔に協力して欲しいのです」
「僕が……?でも僕には何の力もありません!封印を解いてしまったのは僕だから協力したいのは山々ですけど…」
そう、僕には何の力も無い。
出来ることなら何でもしたいけど僕はただの人間で、こんなお伽話のような世界の力なんてあるはずもない。
そんな僕に一体何が出来るというのか。
神「……私の目には、貴方自身さえ気付いていない不思議な力がその身に宿っているのが見えます」
「不思議な…力……?」
オウム返しのようにそう呟けば、目の前の神羅帝は小さく、でも確かにコクリと頷いた。
神「きっとその力が貴方を導き、貴方を護り、貴方に力を貸してくれるでしょう」
ふわりと神羅帝の綺麗な白い指が僕の頬に触れる。
でもその感触は無くて、暖かい柔らかな風が頬を撫でたような感じがした。
神「私は貴方を“神子”と呼びました。貴方の中に眠るその秘めたる力は誰にでもあるモノではありません。貴方は光に愛されている子……。今は弱く小さな光だけれど、きっといつか闇を打ち砕き、人々の心に光を齎す存在、本当の意味での“神子”になれると私は思います」
神羅帝は僕の手を取り立ち上がらせると僕の前に跪いた。
焔「神羅帝!?;;」
神「お願いです、景慧殿。鬼叉王を封印するために、どうか我々に力を貸してください。この人界の人々の為にも…」
神羅帝は焔と共に僕に頭を垂れる。
.
最初のコメントを投稿しよう!