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『お館様、若君をお連れしました』
「父上、失礼します」
晴「入れ」
中から返事が返ってくるのを聞いてから部屋の中に入る。
上座に父上は静かに座っている。
晴「景慧と二人きりで話したい。お前は下がってよい」
『はっ、失礼致します』
父上に言われて忍は下がる。
晴「景慧…こちらへ来なさい」
「はい……」
穏やかな目をした父上が僕に語りかける。
僕は父上の言葉に従い傍へと行く。
晴「景慧……まさかこんなに早く別れの日がくるとは思ってもいなかった……」
「僕もです父上……」
しんみりとした父上の言葉に僕は目を伏せる。
晴「ずっと…子供だ子供だとばかり思っていたのに、いつの間にそんなに大きくなっていたのか……」
「父う……」
父上が立ち上がり更に僕に近寄ると僕を抱きしめた。
晴「何故…お前なのだ……。何故私ではないのだ……!人界の永きに渡る大戦を治め、天下を統一した私ではなく……。神羅帝…何故、何よりも大切なこの子を……!」
「……父上、僕は貴方にそこまで愛されてとても幸せです。だからこそ僕はこの国を守りたい。父上が愛する大翔国を……国の人々を……」
晴「景慧………」
「心配するなとは言いません。でも、あまり思い詰めないで下さい。大丈夫、僕はあの【鬼神将軍】と言われた貴方の息子なのですから」
真っ直ぐに父上の目を見て言い切ると父上は目を細めた。
晴「そうだな…。お前は私の自慢の息子だ。必ずこの課せられた使命をやり遂げることが出来ると私は信じている」
小さく僕と父上は頷いた。
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