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「ところで父上、一つ聞きたいことがあるのですが」
晴「なんだ?」
僕はずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「父上は神羅帝のことをご存知なのですか?」
晴「神羅帝のこと?ああ、もちろん知っていたよ」
「えっ!?」
あまりにもアッサリとした回答に僕は拍子抜けしてしまった。
晴「コラコラ、これでも私はこの人界と呼ばれる世界の王だよ?神羅帝のことも、鬼叉王のことも、天界のこと、魔界のこと、天魔大戦のことも古い文献を見て知っている」
「天魔…大戦……。天界と魔界による人界を巻き込んだ数億年前の長き神々の大乱…」
晴「そうだ。それに神羅帝には私が若い頃に一度会ったこともある。この世のものではない神気を纏った美しい姿…今でも瞼を閉じれば蘇る」
その頃を思い出すかの様に父上は目の前の開けた庭を見る。
晴「声だけだったが今日、久しぶりにお会いすることが出来た。いきなり頭の中に声が響いたので驚いたがな」
父上はその時のことを思い出したのか可笑しそうに笑った。
晴「でもすぐにあのお方だと分かった…」
そう言った父上の表情は僕や母上を見ている時の様に柔らかく優しい瞳をしていた。
まるで愛しい者を慈しむみたいに………。
その父上の若かりし頃に二人の間に何かあったのだろうか?
でも、僕は父上があまりにも綺麗に笑っていたものだから、喉まで出かかっていたその質問を最後まで聞くことは出来なかった。
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