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焔Side―――。
晴「焔殿、少し宜しいかな?」
少し離れた位置から景慧を見ていたら、父親の晴啻が俺の所にやってきた。
焔「あぁ、構わない」
港にあった荷物に寄り掛かる俺の隣に晴啻が来る。
晴「…………正直、私はこの使命はあの子には無理だと思っている」
焔「………………」
晴「私は神羅帝と会ったことがある。幼い頃にだがね。その時彼に天魔大戦のビジョンを見せてもらった。文献で知ってから興味があったんだ。だからこそ……鬼叉王がどれだけ危険な存在かを知っている」
焔「だからアイツには無理だと?」
晴「とてもじゃないが景慧にあの鬼叉王を封印出来るとは……」
その目は町の人間達の笑顔に囲まれた景慧に向けられている。
焔「心配すんな」
俺は前を見たまま言い切る。
晴啻の視線が俺を捕らえる。
焔「アイツは俺の主になった。アイツが俺を必要ないと言わない限り、俺は何があってもアイツを守り抜く。鬼叉王を再び封印してアンタの元へと返すその時まで」
晴「そうか……。それだけ聞ければ十分だ。息子を、どうか宜しく頼む」
晴啻は改めて俺に向き直ると頭を深々と下げた。
焔「やめな。一国の王がそう軽々と頭を下げるモンじゃねぇよ」
晴「焔殿………」
俺は前を向いたまま荷物に寄り掛かるのを止め、一歩踏み出す。
焔「話はそれだけか?じゃあ俺はもう行くぜ」
晴「道中お気を付けて」
焔「言われなくても分かってるさ」
俺の言葉に晴啻が笑った気がした。
町人に囲まれる景慧の所へ歩を進める。
焔「景慧、そろそろ出発するぞ」
「あ、うん!」
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