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焔「間に合わなかったか…」
しとしと降り続く雨を雨宿りの為に入った一軒家の軒下から焔が忌ま忌ましげに見遣る。
「ごめん…僕があんな所で転んだりしたから…」
戻る道すがら、僕は曲がり角から突然現れた馬車に驚き転んでしまい、その際足を捻ってしまった。
そのせいもあり、結局雨が降るまでに目的の場所まで戻ることは出来なかった。
焔「気にすんな。あれはあっちが悪いんだからよ」
そう言って焔は僕を支えて雨に濡れない様にしてくれる。
「ダメだよ…焔が濡れちゃ」
焔「いいんだよ俺は。お前こそただでさえ細っこくて弱そうなんだから、せめて風邪引かねぇようにしてろ」
(焔…………)
「ありがと……」
焔「フン…」
お礼を言うと焔はプイッとそっぽを向いてしまった。
でも僕には分かってしまった。
だってそっぽを向いた焔の耳は薄暗くても分かるくらい赤くなっていたから。
(照れなくてもいいのに……)
とは思いつつ、ちょっと可愛いな…とも思ってしまった自分に少し驚いた。
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