四ノ章・中~強さと弱さ~

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「ほむ」 焔「悪かった」 「…………え?」 僕よりワンテンポ遅れて言われた焔の一言に僕の声はまた遮られて。 焔「昼間、お前に怪我させただけじゃなくて、俺が弱いせいであんな危険な目に合わせて…」 怪我は足首を捻ったことで、危険な目にとは稟のことだ、きっと。 焔「俺、自分を過信してた所があったと自分で思う。この数百年という年月がどういう影響を齎していたかも考えずに…」 「えい…きょう……?」 神妙な面持ちの焔の様子に相槌の声さえ躊躇われたけれど、焔の言いたいことが分からなくて聞き返した。 焔「この数百年という永い時間、眠り続けていた俺達四神の力が天魔大戦の時と同じであるはずがない。眠りについた時間は確実に鍛えた体を鈍らせ、力が弱まるには十分過ぎる程の時間だった……。しかし俺はそんな当たり前のことに気付かなかった。結果的にいくら雨が降っていたとはいえ、あんな稟程度の刺客に……!」 ダンッ!と焔が横の石造りの柱に爪の色が白くなるくらい強く握り締めて震える拳を叩き付ける。 ………僕が考えていたよりずっとずっと焔は悔しがっていた。 そしてそんな弱くなってしまった自分が許せなかったんだと思う。 (………分からない) 今まで本当の意味での“強さ”とかそんなこと考えたことすら僕はない。 そんな僕には今、焔に掛ける言葉なんて分かるはずもなかった。 そんな自分の無力と無知さに腹が立った……。 見上げる夜空には綺羅綺羅と煌めく星があるのに、焔と僕の心には雲がかかっていて月も陰って見え無かった。 .
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