杉本剛の場合

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剛は、理解していた 世の中には、天才と秀才と凡才がいる。 凡才と秀才の違いは、努力する度合いで違う。 凡才の剛は、勉強するしかなかったのだった。 毎日、毎日 深夜まで 勉強に明け暮れていた。 いくら努力で凡才→秀才になったとしても… 天才に勝つことも出来ない事を ましてや、自分が天才にはなれない事も 香は、天才である事も理解していた。 また、嫉妬していた。 いつも… 比較されていた。 凡才の剛と天才の香 可愛がられる香と 叱咤される剛 「トントン」 「ガチャ」 『剛…』 利恵が入って来た。 『母さん』 『あまり気にしないでね あの人も悪気があっての台詞じゃないんだから… 叱咤激励のつもりで、長男である、貴男に厳しくしているだけなの』 『嘘だ 親父は、俺の事が嫌いなんだ』 『剛…』 利恵は、剛を優しく抱き締めた。 『そんな事はない 徹さんも私も、貴男を大切に思っています』 そう、静かに呟いた。 剛の瞳から 大粒の涙が零れ落ちた。 哀しいからではなく それは、悔し涙であった。
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