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「おい!何や!もういっぺん言うてみぃ」
バーン!ガチャーン!
「ギャッ」
また、親父が酔うて母親殴った。幼い俺は二つ年上の兄貴と、恐る恐る扉の隙間から廊下を覗いた。
そこには、真っ赤な顔をして鬼の様な形相で仁王立ちした父親と、玄関で顔を押さえて蹲る母親の姿があった。
玄関のガラスが割れ、母親の頬から、赤い血が流れ落ちている。
母親は、声を殺して蹲っている。微かに肩が震えていた。
俺は恐怖からか、ただ呆然と立ち尽くしていた。
その瞬間
「やめて」兄貴が飛び出して父親に言った。
「おんどりゃーお前らも、わしんこと、なめとんのか!?」
兄貴が殴られた。
俺も殴られると思った。瞬間、兄と二人で玄関から飛びだした。
裸足のままで。
近くの公園に飛び込み、滑り台の下に潜りこんだ。
「あいつ、絶対殺したる」兄が拳を固めて唸る。
「俺も、殺す」その時少年は、四歳の頃だった。
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