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暗い自室には木造の無駄に大きなベッドが置かれて、それがこの部屋のスペースの大部分を占めている。
それ以外に、特にものはない。
自分で言うのもためらってしまうくらいに、異常に生活感の無い部屋。
それでも、どこか落ち着くその部屋の雰囲気に満足しながらベッドにダイブ。
柔らかいベッドに染み付いた洗剤の香りに包まれながら息を吐く。
横になった身体から固い力が抜けて、抜けた力の代わりに気怠い眠気が全身を浸蝕し始める。
「今日は良く眠れそうだ……」
誰に言うまでもなく、ただ漏れた独り言に誘われるように瞼が閉じられる。
そのまま、だんだんと、心地よい夢の世界に――
「ひーくん! ひーくん! ひーくん!! 起きて! 起きて起きて起きて起きて起きて!? 何かオーブンが大変なことになったから今すぐ来て!? 早く! 寝てないで早く!」
――はいけないようだ……。
今度はいったい何をやってくれたんだろう、なんて思いながら眠りかけてた体を起こす。
「――Hurry up!!」
心地よい睡眠への旅立ちを邪魔した彼女は、扉の向こうからそう叫んだ。
その声は、何だか本当に困惑しているように聞こえた。
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