プロローグなんてものはなく、

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  扉を開けると、そこには大きく丸い碧い瞳に涙の雫をつくった彼女がいた。 「どうしたの?」 そう尋ねると、彼女はしゃくり上げるような声で、 「オーブンが破裂したの……」 「……はい?」 何とも……想定外というか、右斜め上辺りから130km/hくらいのスライダーを投げられたみたいな……何と言おうか、まさかこんなコミカルな返答が返ってくるとは思わなかった。 「あのっ、その、オーブン使ってて……変な匂いがしてきて、変だなって思って覗こうとしたら……」 ボンッと何かが爆発しているように見えるジェスチャーをする彼女に手を引かれながらキッチンへと向かった。 「……おいおい」 「ごめんなさい……」 キッチンに入って、その惨状を見てから軽く頭痛がした。 なにせ、この間買い換えたばかりのオーブンは無惨にも煙を立てているし、キッチンは何らかの残骸が飛び散り何かもうこれでもかというくらいに汚している。 「何をどうしたらこうなるんだか……」 「……ごめんなさい……」  
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