第一章

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  「あ、でも私のお友達に少し変わった子がいてね」  七菜さんはその子についてわたしに聞かせてくれた。  不思議なもので、聞いてみると確かに変な子だった。  それは日常的な非日常なのだけど、非日常的な日常を送るわたしにとっても、決してつまらない話ではない。  そんな子が実際にいるのか、と思わずつっこみたくなるような内容だった。 「──それでね、この前なんか、ええと、あれ何だっけかな」 「……素敵な友達がいるんだね」 「ええ、それはもう」  七菜さんは力強く頷いて、太陽のような明るい笑みを浮かべる。  羨ましいという感情までには達しなかったが、悪くないとは思った。 「あ、そうそう。思い出した。その子ね、学校でつちのこを探して回ってたんだよ」  思わず空を仰ぐ。 「どんな女子高生よっ」 「凄いよね」  それは確かに凄いかもしれない。そして、わたしも少し思い出した。ここに座っていた少女のことを。  この界隈では流行っているのだろうか、つちのこという単語。特に女子高生にフィーチャーされているみたいね。 「不思議な町なんだね、ここは」  呆れ声でわたしは呟いた。他人のことは言えない身分だけれど。 「うーん……まあ、わりと田舎だから」 「関係あるの?」 「どうだろう」  クスリと微笑んでから、少女は携帯電話を取り出す。時間を確認しているみたいだ。 「そろそろ行かないと」 「あ、うん。お大事に」  最初に見た、今にも倒れそうな面持ちは今では見る影もないが、先程まで(今でも?)病人だったのは間違いない。  途中で倒れてはこちらも夢見が悪い。 「うん。ありがとう。また会えるかな?」  澄んだ瞳でわたしをのぞき込む。  わたしは静かに首を振った。 「多分、無理かな」  それがいつかはわからないが、遠くない未来で七菜さんの中からわたしという存在は消える。これは抗えないことだ。  だから、たとえ会えるとしてもそれは約束できない。してはいけない。 「そっかぁ……うーん、仕方ないかぁ」  七菜さんは残念そうに俯く。 「でも、偶然どこかで会うかもしれないよね」 「そうかもね。偶然なら……」  そんな偶然がないことも知っている。何故なら、すべての運命は細い糸によって決まっているからだ。わたしの運命はどこにも伸びていない。七菜さんと交差することもないだろう。 「……」  それでも、選択肢はあるだろうか。 「さようなら」  
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