第一章

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   わたしには、生まれつき他の人には見えないものが見える。  それは時に、運命とか、因果とか、方向性とか、あるいは赤い糸とか、様々な呼び方をされるものだ。  ほんの僅かな一部の人はわたしと同じようにそれを見ることが出来て、その人たちはそれを『Inherent Fate』と名付けた。  通称──IF。  まあ、そんなことはどうでもいいのだけれど。  呼び方なんてどうでもいい。『クソ糸』なんて呼ぶ人もいるくらいだ。  クソ糸――そう、それは細い糸だった。  万物の方向性と繋がりを視認するためのインターフェース。  この世界を蜘蛛の巣のように張り巡り、そして導いている。  例えば右に行きたいと意志を傾ければ右の方向にその糸が伸びるし、家族同士や恋人同士など関係の深い者同士で糸が繋がっていたりもする。  それは、世界との繋がりを示すものだ。  じゃあ、その繋がりを持たない者がいたとしたら?  どうということはない。  世界と繋がりを持たないだけの話だ。  わたしのように。  
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