プロローグ

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 空が高い。  もちろん、物理的距離に違いはないが、夏に比べ、空が高いと感じる。  でも、確実に、夏のものとは違う柔かな陽射しが、色とりどりに染められた木々を照らし、時々その葉を揺らす風は、涼しさを越えて、冷たさを含んでいる。  もしかしたら、こうやって、空を仰ぎ、風を感じられるのは、ここに流れる時間が、それだけゆるやかなものだという事なのかもしれない。  そんな、秋の道を踏みしめる影が一つ。  大きなリュックサックに、麦藁帽子、そして、分厚いコンバットブーツは、どれも、かなり使い古されている。  しかし、重量感を感じさせない軽やかな足取りが、"彼女"を、見事に、風景に溶け込ませていた。  そう。その人物は、女性だった。  その恰好を見ただけなら、誰もが男性を想像するだろう。
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