一人目

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その言葉に田口は何も言えず、俯いてしまった。 いくら社長命令といえど気がひける。 富永には妻も子供もいるというのに、クビにするというのは彼らをどん底へと突き落とすことになる。   しかし、そうしなければ自分がそうなってしまう。 田口はすっかり気を落とした様子で社長室を後にした。   部署に戻ると、富永を呼び出しリストラを告げた。 彼は田口に泣きながらすがってきたが、どうしてやることもできなかった。 「すまない。許せ」 心の中で、何度もそう呟いた。
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