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『行こっか…』
私は翔太の手を握る。
「うん…」
無言のまま駅の中に入る。
二人で立ったまま…
言葉は無い。
時間が止まればいいのに…
「由衣たん、またメールも電話もするからな」
優しく私の頭を撫でる翔太。
ベルが鳴り響く。
行かないで…
離れたくない…
私は翔太の手を強く強く握った。
あまりにも昨日からの翔太との時間が楽しすぎて…現実に戻るのが恐くて、隣に居る翔太が居なくなるのが辛くて…人でざわめくこの場所に、今二人きりしか居ないような気がした。寂しさが溢れて、私は俯く。
「由衣たん…」
私は泣いてしまった。
翔太の前では絶対に泣かないって決めてたのに…強い女でいたいのに…
止める事はできなかった。
『寂しいよ…』
「俺、次の特急で帰る。もう少し、一緒に居よう?」
私の顔を覗き込み、翔太も今にも泣きそうな顔で言った。
私は首を降る。
『もう少し一緒に居ても…別れは辛いもん。』
「…」
周りの人なんか気にもせず…私達は抱き締めあう。
『翔たん…行っていいよ。』
私は泣きながら翔太から離れる。
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