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-それ-が近づくにつれだんだんとシルエットが見えてきた。
「…まさか…そんな!いやありえないだろ」
アークがクオンを見ながら言った。
クオンは言葉も出ないようで口を両手で覆っている。
腰まで伸ばした銀髪。
華奢な肉体と反した凛とした身体。
まっすぐとした瞳。
触れば切れるような空気。
あの頃と変わらない姿。
アークとクオンは自然に涙が溢れた。
ただただ暖かい気持ちが二人を満たす。
ただただ暖かい涙が頬を伝う。
「ははっ。全く。私に逢えたのがそんなにうれしいのか?ほれ!抱きしめてやろう。こい」
その人は両手を広げて二人を待った。
二人は一斉にその人に飛び込んだ。
「うわっ!重っ!痛いって!いやっ…どこ触ってんだよ!ちょっと!あはっあはははは」
「もうっ!なんであんたがここにいんのよ。いるんならもっと早く出てきなさいよ」
クオンは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら言った。
「このバカたれがっ!どれだけ俺がお前のことを想っていたか!お前の墓参りをするたびに何回涙をすすったか!うわぁぁあん」
アークの涙で床に水溜まりが出来ている。
その人…ネロは優しくただいまっとつぶやく。
二人は「おかえり。ネロ」とネロの胸から顔をあげて涙に濡れた飛びきりの笑顔で応えた。
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