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誰かが暗い道を走っている。
広いのか狭いのか、草原なのか荒野か、はたまた雪原なのか、深すぎる闇の中を走っている。
その後ろからは銃声や叫び声、悲鳴すらも聞こえる。
知っている。
自分はこの空間を知っている。
なぜならこれは過去の夢。
走っているのは自分だから。
走っている自分の顔も見えない程の暗闇の中を走っている。
ただただ走っている。
「―――――、――――!」
誰かの声が聞こえる。
知っていた声が聞こえる。
それでも振り返らない。
胸が締め付けられる様な感じがする。
知っていた。
この声の持ち主を、自分は知っていた。
親しかったのか、嫌煙していたかも覚えていない。
最早それは過去の話。
忘れた筈の自分の残り香。
起きたら忘れているだろう。
単純な、誰でも一度は見る悪夢。
ずっと走っていた。
叫び声が聞こえなくなるまで。
悲鳴が聞こえなくなるまで。
銃声が聞こえなくなるまで。
暗闇が無くなるまで。
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