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少しの時間を掛け、俺と霧亜は五階にある一つの書架の前に立っていた。
書架には一冊の本も無く、ただただ空きのある書架があるだけだ。
だが、その書架と書架の間に異物があった。
どうみても不審なそれは狛犬のような形のそれで、俺の頭にはそれに該当するものは一つしか無かった。
「……ガーゴイル?」
『いかにも。我こそは此所を守護せし門番である』
口から漏れたその言葉に律義に返して来るこの声この口調。
間違い無く校門にいたガーゴイルだ。
「なんでまたこんなところに」
『我を超えた先にこそ宝がある』
「本当でやがりますか?」
トントン拍子に話が進む。
息巻く霧亜にガーゴイルは常と変わらぬ平静な口調で、
『宝を得たくば、我にげーむで勝利を収めよ』
ガーゴイルがまた突飛な発言をする。
「げーむ、でやがりますか?」
『うむ、げーむだ。ルールは簡潔。我にチェスで勝がよい』
そういえばガーゴイルの前には白黒のパネルが填められたチェス盤と駒一式がある。
「の、望むところです。さぁ、掛かってきやがれです!」
そう言ってチェス盤の前に座り込む霧亜。
ん?俺放置されてるな。
『では、いざ参る。先攻は汝からで良いぞ』
「舐めやがって、上等です。やったらー!」
興奮している霧亜と冷静なガーゴイル。
なんか勝敗が見える気が……。
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