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結果は、まぁ良いところまでは行ったんだが、やはり霧亜は敗北した。
全ての駒を失うという惨敗っぷりで。
「ぐっ、石像め遊びやがったですね……」
霧亜が心底残念そうに言った。
両手を床に置き、膝を付いて頭を垂れるガックシポーズで。
『遊んでなどおらん。真剣勝負であった。……さて、次は汝の番か?』
口調一つ変えずにガーゴイルは勝利宣言し、俺にそう聞いて来た。
「む、まあやるにはやるが……少しは手加減しろよ」
俺はそう言ってガーゴイル側に集められた駒を集め、盤に並べ直し始めた。
ガーゴイルも自陣の駒を何らかの力で浮かせ、まとめて並べた。
悔しがっている霧亜を尻目に俺とガーゴイルは横に少し動き、対局を開始した。
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『……参った。汝の勝ちだ』
ガーゴイルが心なしか悔し気に言った。
ガーゴイルの駒を全て討ち、完勝を遂げた。
「よくやりやがったです火威琉!これで先に進めるですぅ!」
喜色満面と言った表情で霧亜が言っている。
感情の起伏が結構激しいのだろう。会った瞬間に比べればコロコロと表情が変わっている。人見知りする方なのだろうか?
とか考えている内に、霧亜が先に進んで行く。
追いかけようかと思ったが、その前にガーゴイルに近付き、
「お前、ちょっと手抜いただろ?」
小声でそう言ったが、ガーゴイルはいつもの調子で、
『さて、知らぬよ。それ、行ってしまうぞ』
そう言った。
気が付けば霧亜は遠くに行っており、走れないここでは追い付き難い距離まで離れていた。
「うお、本当だ。すまんな」
そう言い残して霧亜の後ろ姿に向かって早足で近付いて行く。
ガーゴイルが何か言っている気がしたが、遠くから聞こえ始めた足音で聞こえなかった。
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