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ガーゴイルから遠ざかって約200m行ったところにようやく行き止まりがあった。
そして最端部の棚のに黒い物体が置いてあった。
金色の装飾が額縁にされており、全体に虹色の色付けがされており、本来の質素なイメージとはかけ離れた遺影があった。
そして遺影に写っているのは理事長。
なぜか今朝見た虹色スーツでポーズをキメている写真が。カラーなのもいただけない。
「……また、何というか」
「装飾過多な上に悪趣味でやがる、です」
俺が控え目に表現しようとしたことを一言で言ってくれた霧亜。
こんなにさらりと毒を吐く人だったか?
とか思ってる内に霧亜は遺影の前に進んでいた。
俺はその少し後ろに立つ。
「……火威琉、お前はこれが欲しいですか?」
と、霧亜が唐突に聞いて来た。
「いや、俺はいらない。そこまで単位には困ってないし、なにより霧亜の方が欲しがっているしな」
突然聞かれはしたが、もう決まっていた答えだったので言葉は簡単に出て来る。
「呼び捨てにするなと……まあいいです。お前のその優しさに免じて許してやるです。感謝しやがれ」
遺影を見たままそう言う霧亜の表情は全く見えない。
後方から足音が届くが、会話で気にならない。
「しかし、これだけは言っておいてやるです。―――あ、ありがとう」
霧亜は照れた風にそう言う。
顔は見えないが、黒髪の隙間から見える耳が赤いのを見て取れる。
「どういたしまして。さて、それを取って早い所大講堂に戻ろう」
俺はそう言ってもう一度遺影を見る。
相変わらずふざけたデザインだ。もうちょっとセンスが無いものか……。
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