オープニングディスターバンス

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  そう思った途端、目の前に一つの物体が降り立った。 人型のそれは着地と共に反転、遺影を掴み取り、 「よーし!あたしが一番どぅあー!」 どぅあー ぅあー あー 再びエコーする嬌声。 なるほどよく響くわけだ。 こんなにうるさい声もなかなか聞けない。希少な現象に立ち会わせてもらったので感謝したい。が、   「少しは空気を読めこのばかー!」 俺まで叫んでしまう。 そいつは驚いた様な顔をして、 「あれ?いたんだ」 とかしれっと言ってくれやがった。   「いたんだ、じゃない。さっさとそいつを霧亜に返せ」 掴んでいる遺影を指差して言う。   「えー折角見つけたのにぃー。いいじゃない減る物でもあるまいし」 減らず口を叩くこいつの顔が水銀灯の明かりで映される。 シェリスだ。声と口調で確信していたがやはりそうだった。 そして渡す気が無い様なので仕方が無く、 「仕方が無い。―――ガーゴイル、違反者だ」 そう言えばいつの間にいたのか、シェリスの背後にいたガーゴイルの周囲が歪んでる。   『承知した。我にげーむで勝利するまでは宝を手にする事叶わず。さぁ、我と勝負せよ』 ガーゴイルがそうまくし立て、宙に舞うチェス番を目前に提示してやれ、と言っている。   それに怯んだシェリスから遺影を奪い取り、ついでに霧亜も抱えて空書架から走り去った。 「あー、逃げんなコラー!」 「ひ、火威琉!人を小脇に抱えて走ってんじゃねーです!」 「お前らうるさい!静かにしてくれ!」 ばたばた暴れる霧亜を抱えて階段に向かう。 司書は運良くいない。  
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