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早歩きで螺旋階段を降りると、霧亜がとっとと出口に向かっているのが見えた。
見えたので、その背中を追いかけようとすると、背後で光が瞬いた。
ほぼ反射で膝を折って屈む。そうしてみれば、頭上を何かが駆け去った。
ふと視線を前方に移せば、磨き上げられた大理石の床が一点だけ黒く焦げ、白煙を上げている。
それが起こった事に気付かずに、霧亜は図書棟から出て行った。一緒に来いと言った割には薄情な気もしないでもないが、一応すぐに来ると信じての行動なのだろうと勝手に解釈して、一歩間違えれば即死する可能性がある光を放った張本人へと振り返る。
「やや、外しちゃった」
おどけた調子で殺人光線を放ったシェリスが言った。今の状態を見ると朝見たあの表情が嘘に感じられる。
「むしろ何に当てる気だったんだよ」
「いやー火威琉の頭に直撃させようとしたんだけど、ねっ!」
シェリスがそこまで言って、火威琉の頭上を跳躍する。
それを見ずにシェリスが立っていた位置を見続けると、そこにはガーゴイルの姿があった。
その周囲には小規模な魔方陣が四つ展開されており、そこからナニカが放出される寸前で停止している。
『迷惑をかける。だが、少し横にずれて貰えると非常に助かる』
そう言われたので火威琉は体を右にずらす。
『助かる』
それだけ言ってガーゴイルは展開していた陣から一つの現象が発生させられる。
雷撃だ。とは言っても少し強力な静電気程度の威力しか無いだろう。
だが、人一人を足止めするには十分で、事実シェリスは図書棟から出られないでいる。
と、カウンターから一つの影がゆっくりと接近して来ているのが見える。
どうやら司書のようだ。その顔には冷たい笑顔が張り付いている。その上なにやら殺気に近い気を放出している。
このままここにいては確実に巻き添えを食うだろう。
そう思い、さっさと図書棟から早足で出て行った。
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