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足取りが重たかった。何というか周りの視線に恐れを感じる。
僕はただ自転車のカゴに洗濯物を入れ、ただ後ろから身長二メートル位のサングラスをかけた黒人がついて来ているだけなんだけど。
家の前で、幸か不幸か、良く喋るオバチャンに会う。オバチャンは興味津々と言う嬉しそうな顔で近づいてきた。
「あら、石塚さん。今日はどうしたの?お友達、か何か?」
僕が言ってしまおうとすると、突然彼に肩を掴まれた。
「ハロー、アナタ美しいデスネ。私、ベンキョウ来たジョシュ言います」
自称ジョシュは僕をじっと見つめる。話しを合わせろ、ということだろう。
「そうなんです。あの、留学生のあれなんですけど、アメリカから、来たというか…えぇ」
ジョシュは親指をたてて豪快に笑った。
「あら、素敵な人ね」
誉められて上機嫌になったオバチャンはそのまま行ってしまった。
そして、僕は喋らなくなったジョシュを家に入れ、洗濯物を干した。彼は無言でテレビのバラエティーを見ていた。意外とオチャメなのかもしれない、と解釈することにした。
二キロもあった洗濯物はすっかり干されてしまい、家まで知られ逃げ場などどこにもなくなってしまった。
駅前で交番にでも渡そうと、こっそり決めて
「じゃあ案内しまーす」
とテレビに夢中のジョシュを立たせた。
「オーケー、レッツゴー」
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