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何にせよ第一ホテルに行くには電車を使わないとならないくらい遠く、自転車を置いて歩いていく。
駅前で信号待ちをしていると視線を感じる。ここまでに何度も感じてきた「怖いものへの」視線だろうと思っていると、それまで無言だったジョシュが強く、僕の腕を強く引き横にあった細い道に入れた。そこにはビルの入り口がありジョシュは僕を座らせた。
「カクレテ」と、言いながら自分も身を屈めた。すぐに高く乾いた革靴の足音が聞こえてきた。
ジョシュは右手を自分のスーツの内ポケットに入れた。
嫌な予感は的中した。それはやたらごつい黒い拳銃であった。
カツカツと、近づいてくる足音に合わせるようにジョシュは拳銃をいじくり、そしてゆっくりと足音の方へ向けた。
止められない空気とでも言うべきものを全身から放っている。僕は息をすることも忘れていた。
その時耳元に激しい破裂音がした。ビルの安い大理石が白い煙を立てる。相手が発砲したようだった。耳が変にいたいのと、火薬が臭い。
ジョシュが急に立ち上がる。
「モウダイジョブ」
と、親指を立てる。
その意味は立ち上がって理解した。いや、せざるを得なかった。
発砲してきた男は赤い水溜まりのような中でうつ伏せになっていた。しかし、僕が更に混乱したのはその男が警官の制服を着ていたからだ。
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