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「……ぅ……っ……」
春日は微かに目を覚ました。
身体が重い。思った以上に奈津に吸われた血の量が多かったようだった。
拳を握り、足を踏ん張らせる。
春日のベッドでは亜希が気持ち良さそうに眠っている。
多分、隣の部屋では奈津も眠っているのだと思うが、不意に首筋を触れた。
「……っ!!?」
ズキンと首筋から全身に掛けて痛みが走った。カッターの刃で切られた場所、血は出ていないが、完全に塞がっていないのか触れると痛かったのだ。
あれは何だったのだろうか?
今までで一度も見た事のなかった奈津、今まで以上に怖かった。
それに……認めてしまった。
「とにかく……少しシャワーでも浴びなきゃ、頭を冷やさないと」
亜希に気付かれないように忍び足で一階のシャワー室に向かう。
一度リビングで水を飲もうと明かりを点けた。時計の針は午前3時過ぎ、さすがの外も静寂に包まれている。床を歩くスリッパの音が部屋の中に響いていた。
「ん……ん……………ふぅ」
コップ一杯の水を飲み、頭を冷静にさせた。
それにしても奈津が怖かった。
あれが本当の奈津なのだろうか?こちらに裏があった事と同じように奈津にも裏の顔がある?
「ドSのもう一面は……ドMかな?」
何となくの推測……だが、それは無いな。とにかく反抗せずに素直に言う事を聞いていれば危険な事にはならないと思うが……。
「春日君、主の元から離れてはいけないって事、理解していないの?」
背後からの冷たい声、ある意味ホラーよりも恐ろしい声の主は恐ろしい程に不機嫌だった。
「な、奈津さん……何で起きてるんですか!?」
春日の問いに奈津は答えず、細い指先が首筋を這うように撫でる。
「そんな事は知らない。それよりも奈津の側から離れるなんて……まだ春日君は理解していないみたいね?」
満面の笑みで近付いてくる奈津に春日は無意識に後退してしまう。だが、それは契約違反。
「待って、もう……ダメだから、んんっ!!?」
後退し続けて、背中は壁に当たり逃げ場がなくなると、奈津は春日に乱暴な口付けをした。
抵抗しようとする春日に奈津は耳元で呟いた。
《主に抵抗したら、どうなるか分かってるでしょ?ペットはペットらしく静かに犯されなさい》
その言葉は暗示の如く。春日の身体から抵抗の力が消えた。それに微かな笑みを浮かべた奈津は更に耳元で呟いた。
《良い子ね、それじゃ我慢しなくて声も出して良いのよ。可愛い声をね》
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