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言葉の暗示は恐ろしい程、春日の全てを変えていく。
「ゃあっ……だめぇ……っ!?」
春日を侵していく感覚、触れられる事で敏感になり、声を我慢出来なくなってしまう。
「良いわよ、可愛いわね。もっと意地悪したくなる!?」
奈津は行為を止めない。
春日が許しを乞いても聞く耳持たず、奈津は春日を壊し尽くすつもりだった。
確かに触れられている事は嬉しい。奈津と言う存在を一番感じられるからだ。
だが、たった一つ不安な事があった。
現在は春日に意地悪して楽しんでいる。だが、それも時間と共に飽きて来るのではないのか……と。
そうなれば、捨てられると言う事が怖かった。
だから、何も言う事が出来ない。奈津の好きな時に抱かれ、奪われ、壊され……そして飽きたら捨てる。
元から奈津は誰もが認める美人だ。その気になれば春日の代わりなど……いつでも調達出来る。
その気持ちが内側で爆発して、無意識に涙が溢れていた。
奈津は目尻から流れる涙を指で掬い舐める。
「……どうしたの?」
耳元で囁かれる優しい言葉、奈津の言葉を聞く度に胸を締め付けられるような感覚が春日を襲う。
呼吸が苦しくなり、心臓が握り潰されるような痛みがあった。
「奈津さんは……僕を捨てるの?」
「えっ?」
「奈津さんは、僕に飽きたら僕を捨てるの?」
溢れる涙を堪えきれずに、とめどなく春日の頬を流れた。
「……っ」
その言葉を聞いた奈津は言葉を詰まらせた。春日はもう一人では生きられない。
奈津と言う存在を知ってしまったから、何もかもを奪われてしまったから……。
飽きられる事を怖がった。
捨てられる事を恐れた。
「奈津さんの好きにしても良いから、ペットでも物でも良いから一人にしないで、捨てないで……お願い、お願い……だから……」
春日は奈津から目を反らした。
心が折れそうで、心臓も壊れてしまいそうで、春日の存在理由が消えてしまいそうで怖かった。
奈津からの言葉を聞く事を恐れた。
『飽きた』『捨てる』と言われた時を想像したら、何も出来なくなってしまう。
「……………何言ってるの?主である奈津が春日君を捨てるわけなんて無い。確かに他の男で遊ぶ事は出来ても、春日君は一人しか居ないもの。奈津の大事な弟君だもん!?」
その言葉が何よりも嬉しくて、春日は子供のように泣いた。
奈津はそんな春日を両腕でシッカリと抱きしめてくれた。
「あり……が、とう……………奈、津……さ、ん」
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