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搾り出した声で言葉を綴った。
不安が全て取り除かれた。何もかもが穏やかに包まれた。
「僕はシャワーを浴びてきますから奈津さんは先に眠っていてください」
春日はその場に立ち涙を拭いて笑った。その手を優しく掴んだ奈津は……。
「シャワーが終わったら奈津の部屋に来なさいね。折角だから一緒に眠ってあげる」
語尾にハートマークを付けるような上機嫌さで奈津は二階の部屋へ戻っていった。
主の命令ならば聞かなければならない。
春日は軽くシャワーを浴びると自分の部屋の前を通り過ぎ、奈津の部屋をノックした。
「……良いよ、入って……」
少し恥ずかしそうに返事をする奈津、静かにドアノブを回し中へ入ると、月明かりが照らす部屋の中でベッドの上に座っている奈津の姿があった。
「……ここに座りなさい」
奈津からの命令、ならば春日は奈津の命令に従うだけ……。
ゆっくり歩を進め、奈津の隣に座った。
「……………」
二人の間に沈黙が流れる。
重ね合わさる手と手、春日は少し身体を震わせたが、奈津の優しい笑顔を見て、全てを差し出した。
「大丈夫?無理してない?」
心配そうに声を掛けてくれる奈津、春日はその問いに微かに頷いた。
それを見た奈津は春日を優しく押し倒しキスをした。
脳天から足の爪先まで快感が春日を襲う。切なそうな吐息が漏れ、身体中を電気が走るような感覚、可能な限り声を押し殺しているが、奈津の指先が春日に触れる度に微かな声が部屋に響いた。
部屋が暗い為なのか、睡魔が春日を襲う。
春日の伸ばした両手は奈津を抱きしめると、規則正しい寝息と共に眠りについた。
お楽しみの最中、春日に眠られてしまった奈津は少し残念そうな顔をしたが、すぐに春日を抱き枕にして後を追うように眠った。
《もぅ、御主人様の言う事はしっかり守らなきゃダメだよ?》
耳元で囁く言葉、それは優しく同時に温かく感じられた。
朝一で目を覚ましたのは奈津の方だった。
耳は春日の胸の部分、規則正しい心臓の音が聞こえた。
いつもは春日が朝食を作っているので、今回は奈津が作るつもりのようだ。
眠たい目を擦りながら洗面所に行き顔を洗う。
その後、リビングに向かい冷蔵庫の中から食材を出し、それを慣れた手つきで切っていく。
「ん~、あさぁ?」
次に目を覚ましたのは亜希だった。部屋に春日の姿が無く、亜希は隣の奈津の部屋に入った。
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