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「うん……ごめんね。泣いちゃった。てへっ」
惚けるように涙を拭いて笑う亜希、そんな亜希を春日は優しい抱きしめた。
「構いませんよ。僕の胸ならいつでも貸しますから」
背中に回してくる亜希の両手、少しくすぐったいが春日の服をしっかりと掴んでいた。
そんな中、ドアをノックする音は無く、部屋のドアがゆっくりと開いた。
そしてそこには……鬼神のような形相で奈津が現在の状況を見ていた。
「春日……」
更に奈津に気付いていない亜希は春日にキスを迫っている状態。加えて奈津とは主とペットの間柄、二回も反抗して調教されたのに現在の状態。
「機嫌が悪くなるのは当然のようですね……」
「えっ?」
頭に?マークを付けながら状況を把握出来ていない亜希は不意に春日の視線の先を見る。
それで、その先にあるのはウフフッと言う不気味な笑みが似合う奈津の姿。
「あっ……」
「へぇ……折角、奈津が手料理を御馳走してあげようと早起きまでしていたのに、春日君は亜希ちゃんとラブラブ新婚ライフを楽しんでいたんだぁ~」
奈津の笑顔が怖い……。
満面の笑みで近付いてくる奈津、その威圧感に対抗意識を燃やしたのは何故か亜希。
「ち、違っ……………んんっ!?」
奈津の目の前でキスをしてくる亜希、更に服の中に手まで突っ込んでくる。
あぁ、もうヤメテ、ユルシテ、タスケテ……。
「奈津の顔も三度までって諺知ってるかな春日く~ん。うふ、うふふふっ……」
逃げたいのに逃がしてくれない亜希。奈津の怒りメーターがレッドゾーン突入、メーターの針は限界点まで達しているのに笑みを絶やさない奈津の我慢強さに敬服……。
《こりゃ、今夜は逃げられないなぁ》
さすがの春日も現実を受け入れるしかなかった。奈津の言う事には逆らえそうにも無い。今もこれからも……。
今回は三人で学校に登校、三人だとバイクでは行けなくなるし、たまには運動する事も悪くない。
空は清々しい快晴、桜の花が三人を歓迎するように空高く舞い上がる。
とまぁ、ここまでは構わないのだが……両方に居る奈津と亜希が恐ろしい程、牽制し合っているし背中を二つの視線が刺すように痛い。
「お願いしますから喧嘩は無し、折角、外も快晴なんだから嫌な事は忘れて清々しく学校に行こうよ」
原因である自分が笑わないと後が怖い。
「まっ、今回は仕方ないから許してあげるけど、次は許さないからね」
「先輩に飽きたら私でも良いからね」
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