偶然

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振り向いた時、目の前には奈津の顔があった。 「義姉さん?」 少しだけ驚いたが、これから毎日あるのだと思うと今の内に慣れておかなければならない。 「ご飯ま~だ~?」 子供のような一言だった。 まぁ、見た目は大人っぽいが、中身とのギャップが異性からは良いのだろうが、春日的には、あまり興味が無かったりもする。 「はい。出来ましたからテーブルに運んでください。足を滑らせるなんてベタな……」 「きゃっ!!?」 イベントに発展した。 持っていた料理を盛った皿は空中へ舞い上がり、奈津の身体が後ろに倒れる。 「だああぁぁ~~~!!?」 予期せぬ出来事ではなく、予期してたからパニックになった。 慌てて、倒れそうになる奈津を助けたので安心したのは良いのだが……。 「あっ……」 湯気の上る麻婆春雨や春日特製のビーフシチューが空中に飛んでいて、嫌な予感を感じた春日は奈津を庇うように覆い被さった。 「熱っ……ぅ……あ゙っ!!?」 左肩に集中して、熱い物が襲ってくる。 そして、すぐに激痛……奈津が慌てて春日から抜け出て、肩に触れる。 「熱っ!?春日君、肩、凄い火傷してる!!?」 春日の肩に触れた奈津も指を火傷していた。その手を優しく掴んだ。 「僕は大丈夫、義姉さんは指を冷やしてください。そのままじゃダメですから……」 我慢しているのは目に見えて分かっている事、それでも奈津は混乱しているのか、何をするべきなのかが分からず右往左往していた。 「でも……でも!?」 「大丈夫です。心配ありませんから……」 目に涙を浮かべている奈津をソファーに座らせ、指を冷やし、包帯を巻いてから、料理の掃除を済ませて、それが終わって春日は自分の火傷の治療をする。 範囲が広いので、服を脱ぎ、冷たいシャワーで肩を洗う。 「……っつぅ!!?」 肩に水が触れた瞬間、激痛が走る。 十数分すると、肩の痛みも引いて来た。 少し身体が冷えてしまったが、治療の為なら仕方ない。 それよりも、奈津が大怪我をしなかった事が嬉しかった。 「これなら、大丈夫かな?」 シャワーを切り、その場に立ち上がる。 試しに肩を動かしてみるが、やはり激痛が走った為、無理はせずリビングに戻ると、泣き疲れたのか奈津はソファーで顔に涙の痕を付けながら眠っていた。 春日は救急箱から大きめの包帯を取り出し、肩に巻いていく。 「春日……く、ん……ごめん、な……さい」
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