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ともあれ奈津を含め六人で学校へ向かう事になった。
相変わらず両腕には奈津と亜希が幸せそうに抱き着いている。
どうしてこうも生活が一変してしまったのだろう。
学校が近くなった時に奈津から……。
「学校が終わったら、奈津の学校の校門に来てね」
優しく耳打ちされた。
それは強力な暗示、一瞬だけ何かが通り抜けたかのような脱力感、それでも奈津の言葉は春日の全てを意のままに操る事が出来る言葉。
「了解しました」
返事は反抗的だが奈津には忠実、奈津はそれを見て春日の頬にキスをした。
「あぁ、先輩ズルイ。私も春日にキスするぅ!?」
何もそれを大声で言わないでほしいのだが、亜希ならば仕方が無い。
「あ、亜希……止めろって、周りの皆が殺気の篭った視線で見てるから!?」
特に殺気を発しているのは他の誰でもない奈津だった。
「くぉらぁ!?このエロ男、お姉ちゃんに触れるなぁ!!?」
小雪の飛び蹴りが春日の腰にクリーンヒット、その拍子で玲奈を押し倒す形になった。
「あらあら、強引ね。ハルやん」
今宵は血の雨が降る予感。
「こらぁ、ハルやん!?オイラのマイハニーに何し……ぐはぁっ!!?」
春日に怒ろうとした一樹だったが、その背後からやって来た奈津と亜希に殴り飛ばされた。
「玲奈ちゃん、春日君から離れなさい!?春日君は奈津の物なんだから勝手に抱き着いちゃダメーッ!!!!!」
「玲奈先輩、どさくさに紛れて春日の背中に手を回してキスをねだるのだけは止めてください!!!!!」
「そーだそーだ!!お姉ちゃんの前で浮気なんてするな、変態!!!!!」
「いや、違う!?俺はそんな……!?」
「あら、私はいつでも歓迎するわよ?ほらほらぁ、この美しいスタイル、抱きしめてみたくな~い?」
甘い声で誘惑する玲奈、それを見て頭から湯気を出している奈津と亜希、原因となった小雪にも責められ、周りの男子には凍り付くような殺気が放たれていた。
「もうダメ!?俺は学校行く。って言うか逃げる!!!」
春日は走り出す。
後ろからは奈津、亜希、小雪、玲奈……何故か高校の男子達も血相変えて追い掛けてくる。
「何故、こうなるんだああぁぁぁぁぁ!!!!!」
春日の叫び声は春の青空に響いていた。
平和な日常ではあるが、春日は笑っていた。楽しい事に変わり無いからだ。
学校に行く事、奈津達と話し合う事、今を楽しむ事。
春日達の物語はまだ……始まったばかりだった。
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