プロローグ

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 さすがに限界だったのか、気が付くと僕の変身は解けていた。  しばらくレーダーにも敵の反応はない。  安全だと判断して、相棒もスピードを落とし始めた。 今は海沿いの道を走っている。 「それにしても良く無事だったな、お前」 『トムノ親父二直シテ貰ッタかラナ』 「トムのおやっさんっ!?…生きてたのか」  コイツがこうして動いている事にも驚いたのに、トムのおやっさんまで…。 『ヤツハ殺シテモ死ナネェヨ』  そういえば、コイツを喋れる様にしたのもおやっさんだったっけ。 「違いない」  他愛もない会話をしながら、相棒は何処かに向かって走っている。  懐かしい風の匂いがする。 「昔は…嫌いだったんだけどな」  でも、何故だか今は心地良い。 『オレハ今デモ、オ前が嫌イダヨ』  僕の独り言を相棒が自分の事だと勘違いして拗ねている。スピードが上がり始めた。  フォローを入れないと振り落とされるな、これは。 「さっきは本当に助かった、ありがとう」  相棒がジグザグ走行をやめ、しばらく間を置いてから―― 『アンタノ為二ヤッタんジャナイんダカラネッ!』  妙に高い声で答えた。 「…お前また変なモン見ただろう」  どうやら、おやっさんは本当に生きている様だ。  笑い声が風に流れる。  誰かと笑ったのはどのくらいぶりだろう。  太陽が傾いて、車体が空と一緒に紅く染まる。
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