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「君が、ここじゃみんなが友達だと言うから僕も友達になろうとしているんだけど、全然友達になってくれないんだ。この前なんか大きなクモがトノサマバッタを食べていたんだよ。」
カナヘビは今にも泣き出しそうな悲しい顔になった。
(こいつは俺の言ったデタラメを真に受けていたのか。どうしようか。)
ハンミョウがどう言い訳をしようかと口ごもっていると、カナヘビがこう続けた。
「まったく、友達を食べるなんてどうかしてるよ。君もそう思うだろ。それとも君も食べるのかい、友達を。」
カナヘビは先程とは一転、厳しい顔でハンミョウを見つめた。ハンミョウが一瞬、たじろぐほどの険しい顔つきだった。
「い、いや。俺はそんなことはしないよ。」
ハンミョウがそう言うと、カナヘビはホッとした表情になった。しかし、今度はハンミョウが険しい顔つきになった。一つの大きな疑問がそうさせた。肉食のカナヘビがなぜそんなことを聞くのかということだった。カナヘビだって当然、昆虫を食べているはずだ。ハンミョウはカナヘビの顔をのぞき込むようにこう聞いた。
「そうは言うけど、君だって虫を喰うだろう。当然。」
すると、カナヘビはハンミョウが話し終えないうちから激しく首を横に振った。
「そんなことするわけないだろう。友達だよ。」
ハンミョウはそれを聞いて唖然とした。ハンミョウには到底理解できないことだった。
「だって、君はカナヘビだろう?他のカナヘビは皆、虫を喰ったりするだろう?」
カナヘビは一度鼻息をフンとやると、胸を張ってこう言った。
「僕は食べないよ。友達だもの。絶対に食べないよ。」
「じゃあ君は何を喰っているんだい?」
ハンミョウの問いかけにウーンと考える格好をして、カナヘビはハンミョウをチラチラと見てから、よしと言ってこう切り出した。
「これから行ってみるかい?たぶん君も行ったことのない所だよ。」
カナヘビは目を煌めかせ、早く早くとハンミョウをせかしながら、まるで子供のようにはしゃいでいた。
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